成長ホルモン分泌不全性低身長症について

お母さんのお腹から生まれた瞬間、人間は誰でも50センチ程度の大きさでしかありません。

それが10数年、長くても20年くらいの間で身長が伸び、大人の身長になります。

20代の日本人の平均身長は現在、男性が171センチ、女性が158センチです。

最終身長(成長が止まり、それ以上伸びなくなった時点での身長)には個人差がありますが、この平均を見ると、生まれたときから1メートル以上も身長が伸びているということになります。








一体、どのようにして人間の身長は伸びるのでしょう?まずは脳下垂体から「成長ホルモン」という物質が分泌されることから始まります。

成長ホルモンが分泌されると、主に肝臓に働きかけて、今度は肝臓から「IGF-1(ソマトメジンC)」という物質が分泌されます。

すると今度はIGF-1が、「骨端線」というところに働きかけます。

人間の身長が伸びるメカニズムは、実に不思議で壮大なものなのです。








骨の両端にある柔らかい組織(骨端軟骨)の部分を骨端線といいます。

ここには軟骨芽細胞という細胞が存在し、そこにIGF-1が作用すると、軟骨芽細胞が増殖と成長を始めます。

軟骨芽細胞が増殖・成長すると、タンパク質からなるコラーゲンの繊維が作られ、そこにカルシウムとリンが吸着することで、新しい骨が作られます。

骨が伸びて、身長が伸びていくのは、こうして骨端線の部分がどんどん膨張していくためです。








骨が伸び、身長が伸びるためには実にたくさんの物質が必要です。

骨が伸びるメカニズム(身長が伸びるメカニズム)を見てわかるように、体内で分泌される成長ホルモンにIGF-1(ソマトメジンC)、骨の材料になるカルシウム、タンパク質、コラーゲン、その他にも、マグネシウムや亜鉛などの栄養素が必須です。








しかし、いくら体内に必要な栄養素を取り入れても、「成長ホルモン」の分泌が著しく悪いと、身長が伸びないというケースがあります。

成長ホルモンの分泌が悪いと、どんなにカルシウムなどの栄養を十分にとっていても身長は伸びません。

これを、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」といいます。

身長が伸びるための最初の指令を出す物質であり、身長が伸びるための鍵を握るのが、成長ホルモンなのです。








成長ホルモン療法を用いることによって、成長ホルモン分泌不全性低身長症は治療が可能です。

これは、注射などによって成長ホルモンを体内に補充する治療法です。

この治療法で効果を得るためには、成長期終了前に治療を開始することが必須条件となります。

というのも、人間は成長期が終了すると、柔らかい骨端軟骨で構成されていた骨端線部分が、普通の堅い大人の骨へと変化してしまうので、膨張することができなくなってしまうのです。

これを「骨端線が閉じる」といいます。

成長ホルモンをいくら投与しても、骨端線が閉じてしまえば骨は伸びることができず、身長も伸びません。








骨端線が閉じて成長期が終了する前に治療を開始すれば、長い期間はかかりますが、多くの場合きちんと効果が得られ、低身長状態が改善していきます。

成長ホルモン分泌不全性低身長症を確実に治療するには、できるだけ早期に診断を受け、治療を開始することが望ましいです。

また、成長ホルモンの分泌を促進するサプリメントなどを使用した治療法も有効的とされています。

しかしその場合も同様に、なるべく早いうちに治療を開始した方が、より高い効果が期待できると言われています。








成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療を成功させる秘訣は、早期発見にあります。

そのためには、普段からお子さんの成長をよく観察しておくことが肝要です。

お子さんが小さい頃から成長曲線を作成するなどの工夫をし、成長に何らかの異常を感じたら、すぐに小児科を受診することをおすすめします。

また、成長ホルモン分泌不全が原因でない低身長症というのもあります。

それらの低身長症の場合は、裏におそろしい疾患が隠れていることもありますから、やはりその場合も早期の治療開始がより高い効果に繋がります。